眠り

僕は１５歳の平均よりひとまわり小さい。ただ小さいだけじゃなく、どうやら身体の発育も少し遅いよう。
はっきり言って、まだかなりお子様なのだ。

そのせいか仲間の誰よりも早く眠くなり、寝入ってしまう。だからアカデミーにいた時はみんなの寝姿なんて見たこともなかった。

だけど僕も最近少しは大人になったのだろう。
もちろんクルーゼ隊のシフトのせいもあるのだけれど。
時間の隙間を縫うように軍の固いベッドに眠る、その姿は人それぞれで、性格ｶﾞ出ているように思う。

　

ラスティーはいつも仰向け、大の字になっている。
あちらこちらで漏れ聞いたところによると、彼の過去には壮絶なものがあるらしい。
でもそれを感じさせないのは、きっと彼の強さだろう。

ディアッカはうつ伏せ寝だ。顔はいつも右に向けて。
時折寝返りをうって仰向けになるのだけれど、いつのまにかまたうつ伏せている。
軽く握ったこぶしは両耳の脇。額に前髪がおりているととても幼い感じがする。
うつ伏せに眠る人は屈折してて、そのくせ寂しがり屋だとどこかで聞いた。
確かに…。ぜんぜん素直な性格じゃないけれど。

横を向いて膝を曲げ、身体を丸めるように眠るのはアスラン。
胸のあたりに置いた腕は、まるで何かを抱きしめているよう。
それは平和だった頃の記憶なのか、それともピンクの髪の想い人？
大切な大切なものを誰にも言わずそっと守って。とても彼にふさわしいように思える。

　

　

イザークの寝姿を僕は見たことがない。
彼は人前で眠ることをひどく厭う。雑魚寝しなくてはならない時も、一人どこかへ行ってしまう。
誰もこないような部屋で一人椅子に腰掛け仮眠を取ったりするらしい。そして人がくればすぐ目を覚ます。
あんなことで疲れが取れるのだろうか。
眠るという行為は人を無防備にさせる。そのあたりが彼の許容範囲をこえているのかもしれない。

　

　

初めてベッドを共にした夜は背中合わせで眠った。
休暇中立ち寄った、田舎のホテル。
部屋はツイン、セミダブルのベッドは二人分には狭すぎて、でもなんとなく離れがたく。
そのせいで少し寝苦しかったのかもしれない、明け方、信じられないほど早い時間に目を覚ましてしまった僕は、息を殺して気配をうかがった。

僕が動けば彼も…？
だけどどんな風に眠るのか気になって仕方ない。
そろそろと起きあがって、薄暗がりのなかイザークの姿を見ようと目を凝らせばイザークと、視線がぶつかった。

すかさず手を伸ばし、僕をベッドに引きずり込む。あせった僕に彼は「まだ寝とけ｣と一言。
声はまるでずっと起きていたかのよう、横になっているとはいえリラックスしているとは言い難い姿勢。

それでも。
瞼が半ばかぶさった寝惚けまなこ、うっすらと開いた唇。
あんな顔はきっと誰も見たことがないだろう。
こみ上げてくる嬉しさを押さえきれず、僕は自然と笑顔になる。

背中のとろりとした温もりに心を委ね、また目を閉じた
いつかまたこんな風に二人で眠る事があったなら、こんどこそ。
でもそのためには、また……あの…？

毛布を引っ張りあげて頭からかぶる。
昨夜の出来事、『初めて…』を思い出してしまった僕はもう眠れない。
背後からは静かな寝息、こっそり背後を盗み見れば。

信じられないほど整った、それでいて優しい寝顔が、僕の心臓を射抜いた。

　

　

　

〈補足〉
イザークは朝が苦手、が自分設定。寝起きの機嫌はいつも最悪なので、声ははっきりしているくせにすぐまた寝つく。ニコルと一緒だからリラックスして眠れたけど、基本的に眠りは浅い…等々。
自分設定の塊のような話ですみません。