<ＰＭ８：１４>

夜になってもヒイロは三人のままだった。
皆は本当に僕にヒイロを任せて帰ってしまった(皆、なぜか「お幸せに」という台詞を残して……）
そしてその後、リリーナさんからメールが届いた。やっぱり一言、「お幸せに♪」と書いてあった。
……ずいぶん前から応援してたって言ってたけど、彼女達は一体僕とヒイロをどんな目で見ていたんだろう――謎だ。

「今日は疲れたからもう寝よう」
ヒイロ三人にそう言ったら、今度は誰が僕と一緒になるのかで揉め始めた。
｢俺と一緒に朝まで眠ろう、カトル」
｢いや、こいつと一緒に寝るのは危険だ。俺と寝よう」
｢………」
今日一日で、似たようなやり取りがもう何度もあったから、少しは慣れてきたけれど―――
｢カトル、俺達の中で誰が一番好きだ？」
｢答えてくれ、カトル｣
と、三人に迫られた時は本当に困ってしまった。
僕は考えて考えて―――こう言った。
｢うーん、優しいヒイロＡもいいなぁとか、ヒイロＢみたいに、情熱的なヒイロも素敵だなぁとか、やっぱりヒイロＣが一番落ち着くかなぁ、とか…。色々思ったんだけど、やっぱり、みんな僕の大切なヒイロの一部だから…」
これが、今日一日の僕の正直な気持ち。
｢みんな大好きだから、みんなで一緒に寝よう？｣
その言葉に、ヒイロＡはなんだかほっとしたような表情で「そうか」と笑った。
ヒイロＢも笑った。
ヒイロＣも―――かすかに笑ったように見えた。

そして僕達は、４人で仲良くベッドに潜り込んだのだった。

　

<ＰＭ１１：１４>

｢今日はいろいろと、すまなかったな」
ベッドの中で寝返りを打ったとき、ヒイロ――多分Ａ――が、囁いた。
「いいよ、もう。確かに大変だったけど、楽しかったから。それからね、言うの忘れてたんだけど…」
「なんだ？」
「会いに来てくれてありがとう。嬉しかったよ｣
そう言ったら、ヒイロは笑った。
そして僕達は眠りに就いた。

　

　

<ＡＭ６：００>

翌朝、三人分の温もりが消えていた。
目そ開けると、ヒイロが一人、途方にくれたような表情でベッドの端に座っている。
きっと昨日の出来事は、彼自身にとっても思いもよらぬことだったに違いない。

｢ヒイロ、昨日の事……覚えてる？｣
尋ねて見ると、茫然としたまま頷いた。
その様子がなんだか可愛くて、気の毒だけど僕は笑ってしまった。

｢ねえヒイロ、どうやら僕達はもう、公認のカップルらしいよ」

　

こうして不思議な不思議な１１月１４日は、幕を下ろしたのであった―――――――――

　

終わる